リュウ・ジーホン「ミミズ Earthworms」

リュウ・ジーホン
「ミミズ Earthworms」

2022.7.1 - 8.3

オープニングレセプション:
7/1(金)17:00 - 19:00
*作家が在廊いたします

© Chihhung Liu
Press Release

場所:nca | nichido contemporary art
会期:2022年7月1日(金)- 2022年8月3日(水)
営業時間:火 – 土 11:00 – 19:00 (日・月・祝日休廊)

nca | nichido contemporary artは、台湾出身のリュウ・ジーホンによる個展を開催いたします。
リュウ・ジーホンは様々なジャンルの小説や詩、哲学にインスピレーションを得て、日々の生活で偶然出会った事柄や旅先でみた風景に物語を重ね合わせながら自身の表現に投影しています。それは自然景観や事物の観察だけではなく、言葉で表現できない感情や感覚、時間軸、音を多面的に捉え、視覚化しようと試みています。表現は絵画にとどまらず、プロジェクトやテーマによってインスタレーションや、映像、文字(書)、立体など様々な素材を用います。外出や行動制限のある近年は、ローテクのARやVR、Google Cardboardやスマートフォンを使った表現に挑戦するなど、これまで国内外を行き来し、フィールドリサーチを通して制作をしていたリュウにとって、大きな転機となりました。
目が見えず、手足も持たないミミズは生きるために体全てのあらゆる感覚を使って周囲の音や光を捉えて危機を逃れます。ようやくコロナ終息の兆しが見え、長い閉塞感から解放された後に見た日常風景は、これまで見えなかった小さな、詳細な事象が目に付くようになり、リュウは多くの事を見過ごしていたことに気付かされます。新作では、「ミミズ」のように身体全体の感覚を研ぎ澄ませて対象をよりクローズアップして観察を重ね、さまざまなイメージを組み合わせることで現在の周囲環境や世界をより理解しようと試みます。
本展では最新作ペインティングと近作計25点を発表します。

湿地のミミズが豊かに織り成すもの:
劉致宏の現代風景画の考察、ローカルカラーからクリティカルゾーンまで
文:陳晞(チェン・シー)/ 美術評論家

「……絵画とは、画家の人生ドラマを演じるための舞台だけではなく、その命も同様に大切である(中略)画家がさまざまな素材と関わるプロセスが、ポロック注1の言うギブ・アンド・テイクであるならば、事物と画家自身の生命は、混じり合うなかで一体となることができる」――バリー・シュワブスキー,『Landscape Painting Now』(2019),抄訳

劉致宏(リュウ・ジーホン)が描く絵のテーマは、自身の暮らしと地続きに繋がっている。彼はしばし事象を微細に描き写すことを主とせず、叙述的な線と情趣の発露に任せた画法でイメージを掬い上げては、薄く塗られた背景から発する余情や雰囲気、あるいは生活の情景の閑けさをそれらに纏わせる。個展「ミミズ」の油絵は、初期のアクリル画にみる艶やかな明るさ、湿っぽさといった趣向の流れを汲んでいるだけではない。劉は、白黒二色で絵画を制作する過程で会得した構図やタッチ、濃淡をコントロールする術を、色彩の世界でも自在に発揮し、独自の絵画観を形づくっている。勢いのある太い線と細い線がより合わさり、あえて抑えた色使いが引き立て合うなかで、劉ならではの経験が凝結されているのだ。葉脈が線状に伸びるさまやその形象の輪郭線が活写され、ある主な色調が外へと押し広げられていく――実存なるものと眼にするものを、キャンヴァスの表面で上手く取り持ちながら筆致を重ねる劉の作品群は、現代的エッセンスが強く感じられる風景画だといえる。また本展の出品作は、樹木の肖像画とコロナ渦で派生した風景画といった2つの視点軸に分けることができるだろう。言うまでもなく現代を表象する風景画とは、決して今ここで見た眺めとは限らない。現代的な風景画とは、抽象絵画以前の最も抽象的な絵画ジャンルの一つとして、16世紀の風景画、20世紀のモダニズム絵画、戦後に発達したアース・ワーク、人新世と呼ばれる眼差しの先にあるクリティカルゾーンをも照射する。台北市立美術館のグループ展(2019)で、劉は人生の不連続な一瞬の体験を絵画で描(書)き起こし、記録し、読み直し、再生するプロセスを提示した。それは、ヒトと環境が“親密になればなるほど断絶される”といったパラドックスな関係や連結の集成ともいえる。劉の絵画作品にたびたび登場する熱帯植物は、南国の象徴記号として、肖像画の点景的役割を果たしている。背景は省かれ、肉眼では捉えることのできないモノたちを取り巻く気象、湿度、温度、そして気配の向こう側にある感性的体験までもが、線画やペインティングを介して立ち現れる。メディウムの固有性の解放と人新世における現代美術の文脈のなかで、現在のフェーズの劉はウィズコロナ時代の流浪者であり、業としての絵画芸術への回帰を試みる担い手でもある。これまで自然は眼に与えられる眺めとして征服され、風景に帰せられる環境は独立することなく描かれてきたが、劉のあらゆる芸術的実践――絵画、場所性に立脚したインスタレーション、サウンドスケープのリサーチなど――は、ギブ・アンド・テイクに回帰する。このような繋がりこそ、より対等な立場で新たな相互理解を可能とするのかもしれない。

訳:池田リリィ茜藍

注1:ジャクソン・ポロック(1912-1956),『Possibilities』 (Winter, 1947-1948)。


劉致宏 | リュウ・ジーホン
1985年台湾・新竹市生まれ。現在台北市在住。
2012年国立台北芸術大学大学院卒業
近年の主な個展:"SAND LAND", NHCUE Art Space(National Tsing Hua University), 新竹、台湾 (2020) / "SILENT & STILL" TKG+Projects、台北(2020) / “MONOCHROME”, Zou-no hana Terrace, 横浜 (2019) / “THE HIDING SONG”, apartment der kunst Munich, ドイツ (2018) / “PALUDES”, nichido contemporary art, 東京 (2018) / “NOVEMBER, Hsin-An”‧HOWL Space‧T、台南(2016)/ “L’OISEAU BLEU”‧Galleria.H、台北(2016)/ “SUMMER FLOWERS”‧Taipei Artist Village、台北(2016) / ”SHORT FICTION” 台北市美術館、台北(2014)
近年の主なグループ展:"Interpreters’Screening Ⅱ-The Mysterious Island”‧Hong Gah Museum, 台北(2021) / "An Uncharted World”, MoCA Taipei, 台北(2021) / "2021 YuGuan Island Art Festival”, 台南 (2021) / "YOU ARE ME”, Hsinchu City Museum‧Hsinchu, 台湾 (2020) /
"Displacement of True or False”, Taipei Artist Village, 台北 (2020) / "Island Tales: Taiwan and Perth”, Taipei Fine Arts Museum, 台北 (2019)
"Painting From Taiwan”, Eli Klein Gallery, New York (2019) / "Daisuke Miyatsu collection x Kasama Nichido Museum of Art - Synchronicity
- Blending the quintessence od modern and contemporary art”, Kasama Nichido Museum of Art, 茨城 (2019) / “Metahistory”‧TKG+ Projects, 台北 (2018) / “LADY DIOR AS SEEN BY”‧Art Basel Hong Kong-Hong Kong Convention and Exhibition Centre 香港 (2018) /
“Harper's Bazaar 150 Years: the Greatest Moments” Taipei 101 Mall、台北(2017)、“Very Period”‧VT Art Salon、台北(2017)、 “LADY DIOR AS SEEN BY”‧Christian Dior Foundation、台北(2017)、“A Journey Far From Home”‧galerie nichido、台北(2017)、“An Ode to Thirty”
レジデンスプログラム:EKWC - international artist-in-residence and centre-of-excellence for ceramics、オランダ (2021) 、ARTSPACE,シドニー、(2016)Changwon Art Hall、釜山(2016)、Pier-2 Art Center、高雄(2016)、秋吉台国際芸術村(2015)、Seoul Art Space _ Geumcheon、ソウル(2014)、Haslla Art Center、ソウル(2013)

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