curiously enough...  ―東南アジアの現代美術― vol.2

curiously enough... ―東南アジアの現代美術― vol.2

2019 9.13 - 10.12

レセプション:9月13日(金)18:00 – 20:00

©Dusadee Huntrakul
Press Release

会場:nca | nichido contemporary art
会期:2018年9月13日(金)-10月12日(土)営業時間:火 – 土 11:00 – 19:00 (日・月・祝 休廊)
レセプション:9月13日(金)18:00 – 20:00
Artist: Dusadee Huntrakul / Samak Kosem / Tammy Nguyen
デュサディー・ハンタクーン / サマック・ゴーセム / タミー・グエン

nca | nichido contemporary art は東南アジアの現代美術にフォーカスしたグループ展「curiously enough…-東南アジアの現代美術-」展 を開催いたします。
本展のタイトル、“curiously enough…”とは、事実や予想とは異なる結果や事柄に対する驚きや好奇心を意味する慣用句です。事実と認識していた事柄も、物事の概念の捉え方によってそれはまったく別の意味や感情をもちます。現代社会に大きな影響をもたらし、どこにいてもリアルタイムで多くの情報を得ることができるSNSは非常に便利である一方、膨大な情報が錯綜し、事実が不透明になることも少なくありません。各々が正しい情報を選択し考え、それを認識することは今後の課題の一つです。本展では異なる宗教、嗜好、生活環境で育ったアーティストが自身の体験を通して違和感や関心を持った事柄に焦点を当て、それぞれの視点と表現方法をもって作品に表します。

タイアーティスト、デュサディー・ハンタクーンの手がけるドローイングや小さな立体作品は、個人と集団とが交わる点を強調しています。本作品ではより良い生活、再生と発展を求めて境界を越える人々の波を想像し、そこから聞こえた思いやメッセージを織り交ぜながら作品に表します。非常に比喩的で、ときにシュールな形態はまるで純真な子供が描く絵を想起させます。それは制作から5000年以上経ったものにも見える一方で、つい先日創られたもののようにも見えます。国や性別を問わず、私たち人間の記憶や感情には共通するものがあることを思わせ、それは人間の進化の一つの明確なサインであるかもしれません。

ベトナム人アーティスト、タミー・グエンはベトナム戦争の影響でアメリカに渡ったインドシナ難民の娘として育った自身のアイデンティと記憶を元にしながら、今も絶えない人為的戦争によってもたされるディアスポラ(移民)やテロの問題に焦点を当てて作品を制作しています。ベトナム戦争中の人の生命の最期は、正確に獲物を捕らえるという点で母が鶏を一撃で殺し、さばいて料理をする行為に似ているというグエンは、鶏をモチーフにした作品が多く登場します。無限の想像力と地政学の研究を通して、生存者の一人として地域環境の歴史を辿り、イメージを幾重にも重ねながら物語を紡ぎます。

大学で人類学を学んだサマック・ゴーセムは継続中の研究課題であるタイの深南部におけるイスラム教文化と、人間以外の動物との関係を作品のテーマの核としています。マスメディアによって描写される紛争や混乱のイメージに替わり、ゴーセムは性や宗教への社会的圧力や暴力を表現するためのツールとして、動物(羊)と風景(波)を用います。そのなかでも本作品ではLGBTQで、タイ人であるイスラム教徒に焦点を当てています。クイア(性的少数者)であること、またイスラム教徒であることはゴーセムにとってのアイデンティでもあります。しかしながら家族や社会、宗教団体が期待するものとの違いに葛藤が続き、今も多くの人々に理解されない状況が続きます。
音は時に心地よいものにもなれば、反対に誰もが望まない声(音)であればそれは騒音となり、消されてしまいます。ゴーセムは自身の体験をもとに、こぼれ落ちてしまった少数の意見を拾い上げ、映像や写真で表します。

本展は現在台湾の高雄市美術館で開催されている、東南アジアの現代美術をフォーカスした展覧会、「SUNSHOWER: Contemporary Art from Southeast Asia 1980s to Now」とのコラボレーション企画として台北日動画廊で7月に開催された展覧会の巡回展となり、本展で発表される作品は未発表の新作も含まれます。

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