今西真也:「Isanatori」

今西真也:「Isanatori」

2017 4.21 - 5.27

オープニングレセプション
4.21 (金) 18:00 - 20:00

©Shinya Imanshi
Press Release

会場:nca | nichido contemporary art
会期:2017年4月21日(金)-5月27日(土)
営業時間:火 – 土 11:00 – 19:00 (日・月・祝 休廊)
レセプション:4月21日(金)18:00 – 20:00


 この度、nca | nichido contemporary artは今西真也による初個展「ISANATORI-いさなとり-」を開催いたします。
今西真也は、キャンバスに油絵具を厚く塗り重ね、筆致の跡を力強く残し、削っていく行為を繰り返しながら描いています。画面から距離を持つと次第に表れるイメージは、崩壊した建物や朽ちた花、稲妻、それを伴う入道雲など、一見ものの変化や消失、退廃を連想するイメージです。しかし同時に再生、蘇生や復興をも想起させ、死(おわり)と生(はじまり)が表裏一体の関係であることを示しています。素材とイメージ、視点と距離との境界、関係性を探りながら私たちが認識している事柄のあいまいさや不確かさを提示しようと試みています。
本展のタイトルである「いさなとり」とは「鯨魚(いさな)取り 海や死にする 山や死にする 死ぬれこそ 海は潮干て 山は枯れすれ 」(*訳:海が死ぬということなどあるのだろうか? 山も死ぬのだろうか? そんなはずがないのに。でも死ぬからこそ、海は潮が干し上がるのだし、山も草木が枯れるのだな) という万葉集の歌の一説から来ています。古都奈良で生まれ、伝統文化や歴史を身近に触れて育った今西は、日本文化に根ざした生命観(生命の物理変化、サイクル <成住壊空>)への関心が根底にあるようです。 本展では5mの大作を含む最新作約15点を発表いたします。


今西真也の芸術的実践

 たっぷりとした量感を持ちながら真白く塗られた油彩絵具による画面を、斜めの破線状に抉り取るような筆触作法を施して白い画面の下に隠された暗色系の絵具を顕わにし、その傷跡のような表現を集積することによってある図像を成立させるのが、今西真也の絵画作品である。
 いま私はここで無造作に「成立させる」と述べたが、今西の絵画を観る者は、先ず彼の絵画との距離や位置を違えることによって異なる表情を表し出すことに気付く筈である。同時に、今西の絵画が単にその傷跡の集積によるイメージをつくり出すことのみを目的にしている作品ではないことも理解するかもしれない。さらには、視点を違えると異なるイメージが現れるといった視覚の遊びに堕した作品ではないことも…。以上の様に、見方によっては今西の絵画は揺らいでいる様にも見える。そこで私はこのエッセーで、今西が自らの絵画作品に於いて成立させようとしている世界を明示していきたい。

 今西は、学生時代に教師から「絵画を構造的に捉える」、「日本人としての絵画を考える」という二つのテーマを与えられたという。大学院に進み、それまで自由闊達な表現を展開していた今西にとって最初の試練であり、今なお今西に負荷を与え続けている命題である。「構造的に」というのは絵画を歴史的に(精神的に)そして技法的に(物理的に)解析せよ、という意味であると共に、構造主義的な視点でも(現代思想の視点によっても)考えよ、という普遍的かつ学生には過重なテーマではあった。とはいえ、違うステージに入り、家業の継続という社会的役割も課されていた今西はそれらの責務に真剣に取り組む必要があった。先の二つのテーマに先立つ大前提である独自な表現という課題も伴い、フォーマリズム的な論点も導入し、比較的ミニマルな傾向の制作を試み続けたようだ。いまここで、その一つ一つを展観する余地は無いのだが、大学院二年次後半、グラデーションを施したモノクロームの色面上に建築パースとその補助線を描いた作品を発表してある手応えを得る。線遠近法と明暗表現という二次元上に三次元を表わす基本原理を単純化し合成するという極めてシンプルな表現を実現することによって、原理原則を可視化するという明解な論理で作品を成立させる手法を、今西はこの時点で会得したのである。

 さて、もう一つの課題である「日本人としての絵画」というテーマに適う要素を探し求める中、今西は浮世絵版画の「雨」表現に注目する。物理現象としては「点」である現象を「線表現」としたのは日本独自の表現であるという意見を聞き及び、その応用を思考するようになったという。点の垂直方向の運動を線表現へ変換することは比較的容易く、日本特有の表現であるという証明は難しいかもしれないが、ゴッホが浮世絵を模写したいくつかの作品の中に広重の《大はしあたけの夕立》が入っていること等がその傍証になるだろうか。次に今西は白いフラットな絵画表面を用意する。グラデーションを施した画面が西欧的な陰影表現を象徴していたことに対してこのフラットな画面は日本の浮世絵版画に代表される平板な表現を表象するだろう。その面に破線状の線表現を施し、さらにその破線がスリットの役割を果たすかのようにして白い色面に何らかの画像が浮かび上がるような構造によって今西の今日のスタイルがつくり出されたのである。今西作品を鑑賞する際に、画像を的確に紡ぎ出す視点は、作品の大きさや描かれた内容によって異なるだろう。その非合理性は逆に今西の作品様式の特色であり魅力ともなっている。
 今西の絵画に対する探求はまだ端緒についたばかりであり、その論理も明確であるとは断言できない。しかしながら、実践するための原理は普遍的なものであり、短期間に掘り尽くせる命題ではない。作家の強い信念に基づくこのような芸術的実践は、新たな表現を生み出す基本原理となるであろう。
中井康之(国立国際美術館 学芸課長)


今西真也(いまにし しんや)
1990年 奈良県生まれ
2015年 京都造形芸術大学大学院 芸術表現専攻 ペインティング領域 卒業
主な展覧会:日台文化交流展覧会マイコレクション展、寺田倉庫、東京(2017)、”echo of the echoes”,西武渋谷店、東京(2017) 群馬青年ビエンナーレ:群馬県立近代美術館(2017) / "混沌から躍り出る星たち 2015 京都造芸術大学 次代のアーティスト展" , スパイラルガーデン, 東京(2015) / “Sensing body” nca | nichido contemporary art, 東京(2015) / "3331 Art Fair 2015 - Various Collectors’ Prizes - " , 3331 アーツ千代田, 東京(2015) 他

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