ジャナイナ・チェッペ「Mountain Blanket」

ジャナイナ・チェッペ「Mountain Blanket」

2016 4.22 - 6.4

オープニングレセプション
4.22 (金) 18:00 - 20:00

*アーティスト・トーク「Brazilian Contemporary Art Talks」
場所:駐日ブラジル大使館内AUDITORIUM 日時:4月25日 (月) 18:00~

©Janaina Tschäpe
Press Release

場所:nca | nichido contemporary art
会期:2016年4月22日(金)- 2016年6月4日(土)
営業時間:火 – 土 11:00 – 19:00 (日・月・祝 休廊)
レセプション:4月22日(金)18:00 – 20:00 (作家も在廊いたします。)

*アーティスト・トーク「Brazilian Contemporary Art Talks」
場所:駐日ブラジル大使館内AUDITORIUM 日時:4月25日 (月) 18:00~

nca | nichido contemporary artはジャナイナ・チェッペによる個展「Mountain Blanket」を開催いたします。チェッペは自身の体験やその場所に存在する神話を基に、自然と生命の調和や生命の根源、人間の本質を探究しながらそれを絵画や写真、映像、立体で表現します。本展は最新作のペインティング、映像、立体作品を発表いたします。


「Mountain Blanket | マウンテン・ブランケット」はジャナイナ・チェッペの絵画のタイトル、また展覧会のタイトルでもある。彼女の多様な表現、制作活動を反映するように、本展では、絵画、彫刻、映像作品が出展される。全ての作品は、抽象的にみえる表現の時でも自然界(植物や海洋生物、人間の身体やさまざまな神話、架空の生物)からイメージを引用している。最近、ジャナイナは宝石の原石を参照しながら幾何学的なカタチと質量を研究し、さまざまな角度からそれをを複雑に積み重ねる。まるで自然に形成されたものであるかように、ギャラリースペースの中央に展示される予定である。青く着色された薄い木材を用い、異なる個々の彫刻は積み重なり結晶構造を想起させる。またその形体はどことなく人体が共に立っている姿のようにもみえる。
制作のプロセスは、作品の理解するための重要なキーワードであり、イメージ描写は常に流動し、変化し続けながら最後の最後でようやく彼女の手法が明らかとなる。「Mountain Blanket」(2015)は絶壁、または結晶でできた壁を示唆し、ピンク色の空を背景に幾何学的な心象風景があらわれる。初期の作品は植物が生い茂る熱帯のジャングルに影響を受けており、画面にはその曲線やカタチが表面にあふれていた。今はダイナミックで流れる筆致を残しながら、そのカタチは透明感のある多面体となっている。それらは決してジャクソン・ポロックやウィリアム・デクーニングの表現主義でも即興でもなく、偶然が主観性を代用しながら新たなイメージが創られている。近年彼女は小さい絵画制作にも取り組んでいて、私がこれまでに記述した文脈に従えば、そこにみえるイメージは小さな宝石のようにみえる。またドローイングは作品の大小に関わらずどんな時でも、作品制作の中枢となっている。
そして、フランツェスカ・フォン・ハプスブルクの美術財団ティッセン・ボルネミッサ・アート・コンテンポラリー(TBA21)より助成を得て、フィジーへ滞在した際に制作された映像も同時に展示される。それは、まるで氷山のようにプラスティックの破片が海の中を浮遊し、漂流する。海の中に設置されたカメラによってそのプラスティックの塊の動きと、時々水の中から海面も観ることもできる。さらに何かが動く音も録音されていて、それはどういうわけかイルカやクジラの鳴き声が繰り返されているような電子的な音である。視点を変え、小さな事に疑いを持つと、そこには環境保護問題をも暗示していることがうかがえる。浮遊している塊はタコやイカ、海藻、またクラゲなどの有機的な形をしているが、その色は産業廃棄物、または海に残された汚染されたごみのような人工的な色をしている。
シュルレアリスム運動に関わったフランスの執筆者、ルネ・ドーマル(1908~1944)は、「類推の山」(Le Mont Analogue)という未完の小説を書き、1952年に出版された。この不思議で難解、寓意的な本には、科学者たちが存在しない島を探し、見つけた者にしか見ることのできない「ペラダン」という丸くてとても硬い”ダイヤモンドの父”と言われる貴重な石を探し当てるためにボートに乗って旅をするという物語が書かれている。この形而上学的な旅は、目に見えないものを見せ、幻想的で形式にこだわらないジャナイナ・チェッペの作品とよく合致している。宝石を作るために土地を掘削し石をカットして精製するという、とてつもなく長く費用のかかる重労働は、彼女の制作活動への明確な隠喩であり、現実を分かりやすく変換させて私たちに見せてくれるのである。


Enrique Juncosa
美術評論家


Janaina Tschäpe | ジャナイナ・チェッペ
ドイツ人の父とブラジル人の母のもとで1973年にミュンヘン(ドイツ)に生まれ、サンパウロ(ブラジル)で育つ。
現在ニューヨークとリオデジャネイロを拠点に制作、活動している。

1994年、ブラジル、サルバドール近代美術館でアーティストインレジデンスに参加。97年、ニューヨークのスクール・オブ・ビジュアル・アーツで美術修士号を取得。チェッペの作品はJeu de Paume(パリ); IMMA(ダブリン)Rubin Museum, (ニューヨーク)Museu de Arte Moderna,(リオデジャネイロ)Reina Sofia (マドリード)含む、多くの美術館や公共機関にて展覧会を開催している。また、Centre Pompidou,(パリ), National Gallery of Art,
(ワシントン) Solomon R. Guggenheim Museum,(ニューヨーク)金沢21世紀美術館(金沢)Thyssen-Bornemisza Art Contemporary(ウィーン)等多数の美術館に作品が収蔵されている。

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