石塚隆則「totem」

石塚隆則「totem」

2014 9.12 - 10.11

オープニングレセプション
9.12 (金) 18:00 - 20:00

©Takanori Ishizuka
Press Release

場所:nca | nichido contemporary art
会期:2014年9月12日(金)-10月11日(土)
営業時間:火 – 土 11:00 – 19:00 (日・月・祝 休廊)
レセプション:9月12日(金)18:00 – 20:00
協賛:ターナー色彩株式会社

この度、nca | nichido contemporary artは、石塚隆則による新作個展、「TOTEM」を開催いたします。
石塚の創造する作品には、生々しく、生命力溢れるさまざまな表情の愛らしくもあり、奇妙な小動物(生き物)たちが次々と登場します。それは自身の興味である日本の神話や民族学、戯画や錦絵等に大きな影響を受けています。擬人化された動物たちは石塚に代わって自身の取り巻く世界や思いを伝えます。
本展では、石塚の制作の原点である絵画表現と、立体(木彫)表現を融合させたレリーフ作品と、映像作品を発表いたします。

-トーテム・アルカディア-

木彫で彩色するスタイルの石塚隆則の作品は、随分前から北アメリカ大陸の太平洋に面した沿岸に住む先住民の作る「トーテムポール」みたいだね、という声が少なくなかった。動物が彫り込まれることが多いことも理由の1つだろう。また、土着的な雰囲気、人間が登場する以前の原始的なムード、目を剥いたり、口から妙なものが出ていたり、不穏な空気満載なのだから、呪術的にも見えるだろう。
 トーテムポールは、基本的にはハウスポスト(家柱)、いわゆる大黒柱として存在していたようだが、家族の歴史や紋章、時には辱めのしるしでもあったそうだ。「トーテム」の意味は、もっと興味深いものがあって、「部族や血縁に宗教的に結びついた野生動物や植物などの象徴」だそうで、それらの意味からは、日本の自然崇拝や古代神道の流れに近いものを感じる。であれば、石塚隆則の作品がトーテムポールに似ているのは、当然かもしれない。
 今、現在の日本において、2011年の3.11前と後では、石塚隆則が表現してきた、家族や動物等の生き物に対する命の考え方は、大きく違ってしまったように感じている。
フクシマの原発の問題を含めて、被災した人々だけではなく、私たちひとりひとりが、自分の人生を見つめ直し、さらに「再生」へ向けて歩み出していると感じるからだ。「サンリク、フクシマのあとに詩や絵画やさまざまなアートを創作することは意味があるだろうか」という問いかけについては、たくさんの芸術家が悩み、考え、立ち止まったのだが、かつてのアドルノにしろ、ブランショにしろ、さまざまな議論が交わされてきたが、やはり大きな厄災を前にして、それでも人間は立ち向かう種であることが大事であったのではなかろうか。そうした時代の空気が、表現をする人、誰にでも届いたのが、今、現在の日本だろう。
 石塚隆則は、子供の親になってから、命のバトンがどのように自分に渡ってきたか、さらに自分の子供へ、孫へとどうやって渡すか、を考え始めているように見える。そのことが、色使いや彫刻の一筋、一筋に見てとれる。今回の個展では、石塚なりの解釈による「はじまりの物語」が展示されると聞いた。日本のメディアは「生きろ!」と言ったり、ポスターやテレビCMの中で「死なないで」とか「生きねば」とか、たくさんのメッセージが散見されるが、そんな言葉ではなく、腹の底にどかーんと届くようなイメージが欲しい、というのが正直な気持だ。石塚隆則が夫となり父となって、自分の創作の方向を自分のためではなく、他者への希望ととらえ始めた時、トーテムは桃源郷となるはずである。私が目撃したいのは彼の作品の中にある、土着的な流れと現在の彼の素直な気持ちの融合である。さまざまな厄災や困難を超えての小さい光である。彼が過去に描いた生き物や獣の屍を超えた先を、見せてくれることを期待している。
山口 裕美 (アートプロデューサー)

<石塚 隆則>
1970年 神奈川県生まれ
近年の主な展覧会:大舘・北秋田芸術祭2014、秋田(upcoming)、TAT(トランスアーツトーキョー)、東京(2013/2012)、TRAUMARIS、東京(2011)、「夫婦岩」hpgrp window gallery、東京(2010)、「霊獣」nca | nichido contemporary art、東京(2009)、「毳モノ~ケモノ」DISCO、横浜(2006)、「タベルちゃん」リトルモア・ギャラリー、東京(2005)、「Wa☆ショイ!」マキイマサル・ファインアーツ、東京(2005)、「magical art life –あるコレクターの世界」トーキョーワンダーサイト渋谷、東京(2006)、「カフェ・イン・水戸2004」水戸芸術館及び水戸市立博物館など コレクション:MOT 東京都現代美術館 | 他パブリックコレクション、プライベートコレクション

<山口 裕美>
アートプロデューサー。現代アートジャーナリスト。現代芸術振興財団ディレクター。
アーティストをもっとも近くから応援するその活動から「現代アートのチアリーダー」の異名を持つ。
96年よりウェブサイト、TOKYO TRASHを主宰。アート系NPO法人・芸術振興市民の会(CLA)理事長。
eAT金沢99総合プロデューサー。ARS ELECTRONICA 2004 ネットビジョン審査員。
2010年上海万博記念版画制作プロジェクト委員。
TERADA ART AWARD審査員。Golden Competition 2014審査員。
著書に「現代アート入門の入門」「観光アート」(光文社新書)「Warriors of Art」(講談社インターナショナル)など多数。

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