坂本和也「Under the Same Sky -それでも同じ空の下-」

坂本和也
「Under the Same Sky -それでも同じ空の下-」

2026.7.17 - 8.29

夏期休廊:2026.8.9 - 2026.8.17

©Kazuya Sakamoto
Press Release

会期:2026年7月17日(金)~ 8月29日(土)
営業時間:火 – 土 11:00 – 19:00 (日・月・祝日休廊)
オープニングレセプション:7月17日(金)17:00 ~ 19:00
 
nca | nichido contemporary artは、坂本和也による個展『Under the Same Sky -それでも同じ空の下-』を開催いたします。
坂本和也は、植物の生態系と人間社会との間に共通点を見出したことをきっかけに植物を主要なテーマとし、近年は特に花をモチーフに作品を制作しています。ガーデニングを通してさまざまな植物の成長や変化の過程を観察するなかで、あらゆる生命は固定的なものではなく、多様な条件が重なり合うなかで絶えず揺らぎながら存在していることを実感したといいます。坂本の絵画は、即興的な身体的行為の痕跡や、制作過程において生じる偶然性を積極的に受け入れながら幾重にも層を重ね、緻密に構築されています。また、本展では新たな試みとして制作の場を屋外へと移しました。その結果、絵画を完全にコントロールしているという感覚は次第に薄れ、天候や光、時間、身体、さらには社会の変化といった不確実な条件が交差する環境のなかで立ち現れる事象そのものが、作品を形づくる要素として画面に取り込まれています。生命の儚い運命、生き抜く逞しさ、各々が存在を主張しながらも画面のなかで絶妙な調和をもって共存します。
本展のために制作した最新作を発表いたします。
本展に際し、坂本は以下のコメントを寄せています。



植物を観察していると、それぞれが異なる時間の中で生きていることに気づく。開花の時期も、成長の速度も、環境への応答の仕方も一様ではない。そうした変化を見ているうちに、植物も人間もまた、与えられた条件の重なりの中で少しずつ姿を変えながら生きているのだと思うようになった。
そうした認識は制作の場にも及び、描くという行為が自分の意志だけで成立しているという前提そのものが、少しずつ頼りないものになっていった。天候や光だけではなく、身体の状態やその日のわずかな集中の揺らぎによっても、絵画は簡単に別の方向へずれていく。
こうした経験が積み重なるうちに、自分が制作をコントロールしているという感覚は次第に薄れていったが、それでもなお、その場に現れるものを引き受けながら絵画として成立させようとする行為だけは変わらず続いた。
多様な条件が交差する場に立ち会うこと。
条件の変化そのものがより直接的に現れる場所として制作の場を屋外へと移した。
 
昨日まで咲いていたデルフィニウムの群青が、今日はもうなかった。
八ヶ岳から届いたポピーは、今朝になって開いた。
庭に出ると、何かが変わっている。同じ場所にいても、同じ状態に出会うことは一度としてない。
背丈ほどに伸びたアリウムがふと目に留まり、大胆にもその紫を画面に置いた。それまで保たれていた均衡はあっけなく崩れ、絵画は別の方向へと動き出した。
午後から来客の予定があったので、良い所で切り上げようと忙しなく絵筆を動かすと、予想通り破綻した。
日差しを受けて発光しながら飛ぶ虫の軌跡を、筆でなぞらずにはいられない。
雨の日は描けないこともある。それでも外に出て、少し描いてみる。
 
描くことは、何かを再現することではない。
そのときどきの条件の中で起こる出来事のひとつとして現れる。
天候や光、時間、身体、絵具。それらが重なり合うところに、画面は立ち上がる。
描かなかった日もまた、その一部である。
同じ空の下にいても、同じ瞬間はひとつもない。そのわずかなずれの中で絵画は生まれる。
戦争や分断を含め、私たちは同じ世界の変化の中に存在している。
生は固定された形を持たず、絶えず揺らぎながら成立する。
その変化の連続のなかで、絵画がどこへ向かうのかを今日も見ている。
 

坂本和也


 


 この文章が目に留まった瞬間から、あなたを取り巻く世界はすでに変わっている。一枚の葉が落ちる。一匹の虫が進路を変える。地面を照らす光の位置が変わる。あなた自身の身体でさえ、息を吸うたびに、冒頭で語られた時のそれとは僅かに異なる。人生は決して静止することはない。絶え間ない変化を通じて続き、どの瞬間も完全に繰り返されることなく次の瞬間へと移り変わっていくのだ。
 『Under the Same Sky -それでも同じ空の下-』 は、そんな単純な観察から始まる。絵画とは、人生と同様、制御しようとする行為というよりは、絶え間ない変化との出会いである。庭園のような生活環境を描く時、そこに生命を吹き込む要素― 時間の経過、光の変化、予期せぬ天候、あるいは昆虫や植物の動き―を、どうやって排除できるだろうか。坂本は、こうした変数を抑え込むのではなく、積極的に取り入れ、制御ではなく協働を通じて絵画へと浮かび上がるようにしている。坂本の絵画に見られる重層的な構造は、制作時の状況―移ろいゆく光、変わりゆく天候、即興的な筆致―をそのままに留めている。色鮮やかな筆致からは花の存在が感じられ、その躍動感あふれる性質からは、時の流れが浮かび上がる。
色彩の中には互いに溶け合い、一つに混ざり合っているようにみえるものもあれば、質感や彩度によって鮮明な対比をなしているものもある。視線は画面を彷徨い、何故一部の白の領域は層の下に隠れてしまうのに、別の部分ではその層の上に露出しているのだろうか、と不思議に思う。それぞれの筆跡は、この絵画の制作過程におけるさまざまな瞬間を記録しているかのようで、鑑賞者に、その最終的なかたちの決断や出会い、そして偶然の出来事を想像させるのだ。
 

ミナ・チェッペ




 
坂本和也 | Sakamoto Kazuya
 
1985 年 鳥取県米子市生まれ、在住
2014 年 名古屋芸術大学大学院美術研究科美術専攻同時代表現研究領域 修了
2017-18 年 文化庁海外派遣制度にて台北に派遣
 
主な個展に、“Phantasmagoria: Changing Scenery”, Open gallery(名古屋松坂屋内)、愛知(2025)/ ”IN BLOOM”、 nca | nichido contemporary art、東京(2024)/ ”Spring ephemeral” 、nca | nichido contemporary art、東京(2020)/ ”Symbiosis”、galerie nichido Taipei、台北 (2018)/ “Landscape gardening”、米子市美術館、鳥取(2017)など
主なグループ展に、“ミネバネ!現代アート タグチアートコレクション”、秋田県立美術館、秋田(2025)/ “現代美術|LIFE この世界で生きること”、鳥取県立美術館、日本(2025)/ “ヤンオカ vol.2”、MtK Contemporary Art、京都(2022)/ ”Next World―夢みるチカラ タグチ・アートコレクション×いわき市立美術館”、いわき市立美術館、福島(2021)/ “Identity XIII - Je t'aime… moi non plus -アートを巡る「愛」の旅- ―curated by Daisuke Miyatsu―”、nca | nichido contemporary art、東京(2017)/ “Some Like It Witty”、Gallery EXIT、香港(2014)など

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