nca | nichido contemporary art

EXHIBITION
2026.9.12 - 10.10


Rewriting Tomorrow - 開拓する未来 -



会場:nca | nichido contemporary art
会期:2026年9月12日(土)~ 10月10日(土)
営業時間:火 – 土 11:00 – 19:00 (日・月・祝日休廊)
作家:
ホセ・ダヴィラ / ケント・ヘンリクセン / ピンリン・ホワン / ブルーノ・ペイナド / シニク・スミス
木村忠太 / 脇田和
(ロバート・ラウシェンバーグ )

nca | nichido contemporary artは上記アーティストによるグループ展、「Rewriting Tomorrow」を開催いたします。現代社会を理解するためには、歴史を学ぶことが不可欠です。私たちは過去の出来事や流れを理解することで、今直面している問題への理解を深め、未来への展望を考察してきました。さらに現代アーティストの様々な表現、多角的な視点、思考は、我々に大きな歴史の流れの裏側にある小さな出来事や日常に気づきを得る機会を与えます。本展では、過去からの教訓や概念が現代アートの視点を通じてどのように再考されるのか、上記アーティストの実践を通して探求します。象徴的な芸術作品から要素を取り入れ、新たな文脈に再配置することでこのプロセスを展開する者もいれば、伝統的な芸術的実践からインスピレーションを得て、新たな視覚的可能性を探求する作家もいます。また、主流の物語を支配してきた概念や知識を再解釈し、挑戦することで、純粋に芸術的な言説から現代的な政治的分析へと移行するケースもあります。本展では、それぞれの独自のアプローチと実践を通じて、様々な視点からその先にあるものを見出し、対話の場を作ります。

ホセ・ダヴィラは、歴史上の象徴的な芸術家たちの要素を模倣・流用・引用することで、「芸術作品に重要性と意味を与えるのは形式ではなく内容である」とするコンセプチュアル・アートの定義について考察し、彫刻インスタレーション、写真、絵画を制作しています。本作品ではこれまでに様々なアーティストによって解釈されてきたリヒテンシュタインの作品を用い、中心となる部分を切り抜き、空白のシルエットだけを残しています。紙(写真)を単なる画像を載せる媒体としてではなく、物理的な物体として、彫刻そのものとして振る舞わせようと、媒体に対する挑戦を行うことで二次元の作品と三次元の作品の間、彫刻と表現の間にある『境界領域』を作ろうと試みます。

ホワン・ピンリンの風景画は、自身がスケッチブックに記録した数多くのスケッチや習作を基に、新しい世界を創造します。流れるような筆致と厚塗りの絵の具の層の下に浮かび上がる空間構造を創り出す彼女の作品は、具象と抽象の境界線を歩みつつ、鑑賞者の立ち位置や視点に応じて新たな視覚的可能性を次々と展開します。本作品シリーズは、ホワンのフランスでの経験から着想を得ています。フィンセント・ファン・ゴッホが晩年過ごしたフランスのオーベル=シュル=オワーズや、他ホワンが影響を受けた文化人の痕跡を辿った自身の記憶の断片を画面に積み重ね、ホワンの視点を通して描かれます。下地には土を原料とした顔料を使用し、あえて古典技法を取り入れることで、変わらない当時の風景を想起させつつも、幾層にも重なる筆致の層が時代を行き来し、ノスタルジックで複雑な感情が内包しているようです。

タミー・グエンは自身の体験や歴史、哲学を通して、真実という概念を掘り下げ、それを絵画、ドローイング、版画、ブックメイキングなど様々な手法を用い、作品に表しています。本作品でグエンはプラトンの有名な「洞窟の比喩」を、真実や美が曖昧に感じた瞬間の自身の体験を織り交ぜています。
これらの絵画は、すべて「光」、すなわち「真実」を見るということの意味を探求したものです。プラトンの物語では、囚人は洞窟から這い出し、暗い洞窟の中に閉じ込められていた時には影としてしか見えていなかった物体が、太陽の光に照らされているのを目にして初めて「真実」に気づきます。グエンの絵画はすべて、太陽の光が囚人の肌に触れた瞬間に何が起きたのかを描いています。そこには、囚人の岩のような体が別の物質へと変容する、ある種の変容が起きています。人々の真実とは何か、物事の本質とは何か、我々に暗に提示しています。

ケント・ヘンリクセンは、アルブレヒト・デューラーの木版画、ホセ・グアダルーペ・ポサダの銅版画、マックス・エルンストのコラージュなど、多様な源泉からイメージを引用し、示唆に富んだ新しい物語と絵画的な複雑さを生み出し、それを絹に刺繍を施して作品にしています。丹念に刺繍された作品の中で、ヘンリクセンは人種やジェンダー、権力や対立といった問題を探求し、歴史的出来事の描写と現代のイメージを並置することで、鑑賞者を恣意的な物語と神話が織りなす独自の世界へと私たち誘います。本作品「Pig herder(豚飼い)」は18世紀頃の人物・風景、神話、植物をモチーフとしたフランスの伝統的なデザインの生地(トワルド・ジュイ)を引用しています。天使が謎の衣装を纏った人物に置き換えられ、ユーモラスでありながらも、そこにはさまざまな文化における抑圧者と被抑圧者の伝統的な役割を視覚的に問い直しているようです。

ブルーノ・ペイナドは幅広い素材、形式、技法を用いて制作を行い、その作品が置かれる環境と対話するような芸術的実践を展開しています。アイデンティティ、記憶、伝承、遺産、コミュニティといった問題に対する彼の深い関心は、大衆文化に対する個人的な洞察と響き合っています。ありふれた物や象徴の多様性と、さまざまな文化の美学や内容を巧みに織り交ぜ、西洋のポップカルチャーのイメージが、多民族社会に根ざした伝統や象徴と交錯します。社会によって形成されたアイコンの厳格さや静的性は、ペイナドによって解体され、破壊され、皮肉を込めて再構成されます。文学、美術史、映画、ポップミュージック、広告、テレビなどに言及するだけでなく、それらの象徴を転用することでその意味さえも逆転させてしまうのです。

シニク・スミスは衣類や拾い集めた日常的な素材を、個人的な要素と普遍的な要素が融合した抽象作品へと変容させています。そこには記憶や感情の断片から成り立ち、布や文字に宿る歴史、美しさ、そして可能性と並行して存在しています。それらは一体となって「時間、場所、意味の断面」を形成し、芸術的潜在力の多岐にわたる展開を提示しています。こうして再解釈された物体は、共同体の記憶の担い手となります。そこには、作家自身や身近な人々の記憶だけでなく、見知らぬ人物やコミュニティの記憶、幼少期や思春期の記憶、感情、そして各個人に固有の多様な帰属意識までもが込められ、我々に個人的なレベルから社会的なレベルに至るまで、深く共鳴を呼び起こします。

パリを拠点に活躍した日本を代表する近代洋画家の1人である木村忠太(1917–1987)は、印象派からポスト印象派、特にピエール・ボナールの作品に強い影響を受けました。木村が残した多数の風景画は、実際の風景を基にしつつも、自身の受けた感情、感動を織り交ぜ、独自の表現を開拓しています。家、木々、道が特徴的な太い輪郭線で描かれ、鮮やかな色彩と画面に溢れる光の輝きが絶妙なバランスを保ち、私たちの心を捉えます。

脇田和(1908- 2005) は15歳で渡欧し、ベルリン国立美術学校で絵画を学びます。当時から実力が評価され、帰国後も精力的に活動してきました。従軍画家、戦火でのスタジオ焼失、病等、様々な体験を経ても制作への意欲は衰えず、激動の歴史の混乱、大きな世界と対象に日常にある小さな風景を切り取り、独特の画面構成で鳥や魚、植物を暖かい色彩で詩的に描き続けました。広い世界の中の小さな世界に目を向けた脇田和の作品群は、優しいながらも存在感と生命力に溢れ、我々一人一人の存在を浮き彫りにしているようです。


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