nca | nichido contemporary art

EXHIBITION
2023.10.6 - 11.11


ルーカス・ブレイロック
「AI Stole My Lunchbox / AIにお弁当を盗まれた」


Installation >>

合同レセプション:
nca | nichido contemporary art × 7CHOME OTA FINE ARTS
11月2日(木) 16:00 – 18:00
*作家が在廊いたします
 
「アートウィーク東京」
営業時間:
11/2 (木) 10:00 – 19:00
11/3 (金・祝) 10:00 – 18:00
11/4 (土) 10:00 – 19:00
11/5 (日) 10:00 – 18:00



場所:nca | nichido contemporary art
会期:2023年10月6日(金)- 11月11日(土) 
営業時間:火 – 土 11:00 – 19:00 (日・月・祝日休廊)*「アートウィーク東京」期間中(11/2 – 11/5)は開廊します(時間は上記のとおり) 

nca | nichido contemporary art × 7CHOME OTA FINE ARTS
合同レセプション:2023年11月2日(木) 16:00 – 18:00 *作家が在廊いたします

nca|nichido contemporary artは、アメリカ人アーティスト、ルーカス・ブレイロックの日本初個展を開催いたします。
演劇は、舞台の外で起こった労働を舞台上にもたらすべきであると言う詩人で劇作家のベルトルト・ブレヒトに大きな影響を受けたブレイロックは、大判カメラでフィルム撮影をした後に画像をスキャンし、デジタル処理をしながら写真の背後にあるプロセスを表に示すことに重視しています。ブレイロックの不器用な編集はシュールでダーク、コミカルなイメージに命を吹き込みます。「絵を描くことで世界を理解しようとする」、と言うブレイロックはメディアの限界と内在する矛盾を探ります。本展で彼の代表的な作品含む、最新作を発表します。
 



 
ルーカス・ブレイロックは、撮影した写真にPhotoshop上でのレタッチ用ツールを用いて加工を加えることで作品を制作している。
もっとも頻繁に使用される特徴的なツールは、コピースタンプツールで、ほかにもブラシや選択ツールなども使用される。

コラージュは古くから存在する手法で、シュルレアリストによって、白黒の印刷物を用いてこの世ならざる世界を作り出すために使われたし、キュビストたちには、画布に貼り付けることで画面上に仮構される遠近=世界を破壊し、リテラルな平面を呼び覚まし、仮構の仮構性を暴くための異物として用いられることもあった。ポップアーティストの手にかかれば、膨大に流通する情報=広告をも画題として扱えてしまう時代を示すものとして、コラージュは使用された。

複数の画像を継ぎ接ぎするのは、何も紙の切り貼りだけではない。フィルムに多重露光を施すことによって、写真や映画はその初期から合成を行ってきた。

それらのこれまでのコラージュや合成技術と、Photoshopにおけるコラージュにはどのような違いがあるのか。まず、物理的なコラージュには、必ず「切断面」が存在し、その物理的にはごくわずかの厚みこそが、複数の物質が組み合わされた層をどうしても指し示してしまうことにある。その切断面、複数の「紙」の寄せ集めであることが、コラージュであることの存在証明の継ぎ接ぎとして見えてくるだろう。

フィルムにおける合成は、フィルムという物質的規定の平面性を見れば、よりデジタル画像にも近い。しかしフィルムでさえ物質的な基底を持つ平面であることによって、たとえば、合成の拙い切断面や、複数の光源、複数の焦点が混ざり合うことによる違和は拭いきれないだろう。
Photoshopのコピースタンプツールの特徴は、その素材を「同一の画像」から抽出し、そのまま画面の画素を置き換えてしまうことにある。そのことによって、画中の固有色のみならず、その環境光や焦点距離、色調補正の癖までそのままに、それも切断面なしにコピーしてしまう。この優秀な修正ツールは、優秀なオペレーターの手にかかることで、画面に映り込んでほしくない「余計なもの」を消し去るために頻繁に用いられるツールなのだ。

ブレイロックはしかし、このコピースタンプツールによるレタッチそのものを再度提示して見せる。それは、デジタル画像が今日どのような加工を受けているのか、その仕組みを日の目に晒す仕事と言える。ただ、それを明らかにする態度は、たとえば「不正を告発する正義の者」「この世の裏の仕組みをよく知る智者」といった態度とは異なっているだろう。
むしろ素朴に、デジタル画像の「デフォルト」が、そもそもこのようなイメージの世界なのだというかのように振る舞っている。
 ブレイロックが使用するその他のツールには、選択ツールやエアブラシツールがある。ブラシはほとんどデフォルトの、円形のブラシを使用する。
デフォルトの円は、明快な輪郭の場合もあれば、周縁が均等にぼかされたアンチエイリアス処理が施されている場合もある。どちらにしても、その円は完全な円であり、ぼかしさえも完全に均一だ。

 物理的な接触の痕跡である筆触(ブラッシュストローク)では絶対に起こり得ない、完全な円による痕跡。これもまた、デジタル画像においては、むしろデフォルトの態度であり、むしろ高度な模倣によってようやく物理的なブラシの形態やかすれが再現される。

 コピースタンプの境界線は、明確な輪郭を持つ場合もあれば、アンチエイリアスがかかる場合もある。明確な境界がある場合でさえ、コラージュされた部位は他との馴染みの良さによって浮き立たないが、輪郭がぼやけたコピーは、ますます人間の目に、一瞬自然な佇まいで映る。よくよく見れば違和感があるが、存在としての違和感というよりも、夢の中のようにふわふわととりとめがない。

 そう、デジタルのツールを用いることによってそこに現れるのは、物理的な基底の無さ、重さの無さ、重力の無さであろう。ブレイロックの作品の、妙にふわふわとした仕上がりは、ツールが本来的に持つ無重力性が示されているものなのだ。
 作品の突き放すようなユーモアは、この佇まいに支えられている。

gnck (美術評論家)

LucasBlalockルーカス・ブレイロック
(1978年ノースカロライナ州アッシュビル生まれ、ニューヨーク在住)
2013年 カリフォルニア大学ロサンゼルス校 芸術修士号取得(アメリカ)
2011年 スコーヒーガン絵画彫刻学校卒業 (アメリカ)
2002年アナンデール=オン=ハドソン バード大学卒業 (アメリカ)
近年の主な個展及び2人展:“Potemkin Village”, Galerie Eva Presenhuber,チューリッヒ(2023) / “Toute Pensée émet un Coup de Dés”, Bradley Ertaskiran, モントリオール、カナダ (2022) / “ Lucas Blalock in T-E-L-E-P-H-O-N-E “, Abroms-Engel Institute for the Visual Arts (AEIVA), バーミンガム (2021) / “Florida, 1989”, Galerie Eva Presenhuber, ニューヨーク (2021) / “Insoluble Pancakes”, rodolphe janssen, Brussels, ベルギー (2020) / “Lucas Blalock ... or, Or”, Museum Kurhaus Kleve, ドイツ (2019) / “Lucas Blalock: An Enormous Oar”, ICA, Los Angeles, アメリカ (2019)
近年の主なグループ展:“Sausage Party”, rodolphe janssen, Brussels, ベルギー (2022) / “We didn’t ask permission, we just did it…,” CAM St. Louis, St. Louis、アメリカ (2022), “Objects of Desire, Los Angeles County Museum of Art”, ロサンジェルス、アメリカ (2022) / “Treasury and Laboratory”: 25 Years Museum Kurhaus Kleve, Museum Kurhaus Kleve, ドイツ (2022) / “Interior Scroll or What I Did on My Vacation, organized by Soft Network, Stanley and Sons” The Art Building, Springs, ニューヨーク (2021) / “New Visions”, The Henie Onstad Triennial for Photography and New Med, Høvikodden, ノルウェー (2020) / “The Extreme Present, organised by Jeffery Deitch and Larry Gagosian”, Moore Building, マイアミ (2019) / Whitney Biennale 2019, Whitney Museum of American Art, ニューヨーク (2019) / You Are Looking at Something That Never Occurred, Curated by Paul Luckraft, MAMM, モスクワ (2018)


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