Identity XIII – Je t'aime… moi non plus -アートを巡る「愛」の旅- ―curated by Daisuke Miyatsu―

Identity XIII – Je t'aime… moi non plus -アートを巡る「愛」の旅- ―curated by Daisuke Miyatsu―

2017 6.23 - 7.29

オープニングレセプション:6月23日(金)18:00 – 20:00
*オープニングトーク: 宮津大輔 x 長谷川智恵子 (日動画廊副社長):6月23日(金)19:00 ~

Tawan Wattuya "Wonderland" 2014, watercolor on bamboo paper, 150 x 250 cm
Press Release

会場:nca | nichido contemporary art
会期:2017年6月23日(金)-7月29日(土)
営業時間:火 – 土 11:00 – 19:00 (日・月・祝 休廊)
レセプション:6月23日(金)18:00 – 20:00
*オープニングトーク: 宮津大輔 x 長谷川智恵子 (日動画廊副社長):6月23日(金)19:00 ~

参加アーティスト: Lucas Grogan (ルーカス・グロ-ガン) | Syaiful Garibaldi (サイファル・ガリバルディ) | Tawan Wattuya(タワン・ワトゥヤ) | Nobuyoshi Araki (荒木 経惟) | Ryuta Iida (飯田 竜太) | Kazuya Sakamoto (坂本 和也) | Kentaro Hiroki (広木 兼太郎) | Moïse Kisling (モイーズ・キスリング) | Utamaro Kitagawa (喜多川 歌麿)

この度、nca | nichido contemporary artは、“Identity XIII- curated by Daisuke Miyatsu -”を開催いたします。毎年恒例の同展は、第4回目よりゲスト・キュレーターをお招きし、さまざまな視点からIdentityというテーマについて考えてまいりました。第13回目となる今回は、アートコレクターで横浜美術大学教授の宮津大輔氏に展覧会企画をお願いいたしました。氏は”サラリーマン・コレクター”として国内はもとより世界的に広く知られておりましたが、本年3月でおよそ30年間の会社勤務を卒業され、本展が大学教授就任後の初キュレーション展となります。

Je t'aime… moi non plus -アートを巡る「愛」の旅

最近、”キュレーション”という言葉の安易な氾濫とデフレ化が著しい。現代アートを心から愛する者にとって、こうした現状は嘆かわしい限りである。私はコレクターであり、決してキュレーターではない。だからこそ「Identity XIII」を企画するにあたって、せめて”コレクター”としての矜持と”キュレーション”に対する責任を持ちたいと考えた。なぜなら”コレクター”こそが、私のアイデンティティであり、レーゾンデートルだからである。従って、本展は既に私がコレクションしているアーティストによる新作を中心に、日動画廊のアイデンティティに敬意を表する作品一点を加え構成するものである。

「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう」※1は、東京国立近代美術館主任研究員である畏友・保坂健二朗氏がキュレーションした展覧会のタイトルである。氏はマルセル・デュシャンの「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも」の別名である「愛の機械(Love Machine)」を通じて、”愛”を手掛かりに「網膜的な絵画から脱しつつ、なおも絵画に踏みとどまること」の可能性を探っている。そして、絵画の目的を「自らの、ある人の、共同体のあるいはみんなの、愛(情)を注ぐに足る存在」とする仮説≒同展のテーマへとたどり着くのである。※2
なるほど絵画を愛と呼ぶとは言い得て妙である。但し、私にとってはさしずめ「アート作品、それを愛と呼ぶことにしよう」であろうか。
コレクターにとって作品とは、正に「愛を注ぐに足る存在」である。しかし成就しなかった恋のように、何らかの理由で手に入らなかった作品に対する思いは複雑である。強い憧れや思慕の情とは裏腹に、憎い気持ちがないとは言えずアンビバレントな感情を持ち続けることになる。

稀代の伊達男セルジュ・ゲンズブールの代表曲に「Je t'aime… moi non plus(ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ)」がある。訳せば「愛してる・・・俺は愛してないよ」であろうか。同曲のオリジナルは女優のブリジット・バルドー(1967年)そして、ジェーン・バーキン(1969年)とのデュエットであるが、一人二役のカバーも存在する。これこそ、中々言葉にしづらい私の感情を表わすに相応しく、且つ私が企画する「Identity XIII」のタイトルにも適していると考えた。
そして、多くの示唆を与えてくれた保坂氏の展覧会に敬意を表し、本展を絵画(一部写真とレリーフ状の平面作品を含む)による展覧会とした。更に展示には、ちょっとした悪戯心から歌詞の内容を一部反映している。「愛」についての深遠な旅を、ご一緒いただければ幸いである。

宮津 大輔

※1:「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう」 gallery αM  2012年4月14日~2013年3月23日
※2:「デュシャン以後の絵画:愛と弱さ」 保坂健二朗「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう」 展図録 武蔵野美術大学P13-P17
※3:「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう」 保坂健二朗「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう」 展図録 武蔵野美術大学P10

宮津大輔(みやつだいすけ)
1963年 東京都出身。アート・コレクター、横浜美術大学教授、京都造形芸術大学客員教授。都内の企業に勤めながら、収集したコレクションやアーティストと共同で建設した自宅が、デリム現代美術館(韓国・ソウル)での展示をはじめ、国内外で広く紹介される。2011年7~9月、MOCA TAIPEI(台湾・台北)で全館を使った大規模なコレクション展が開催される。文化庁「現代美術の海外発信に関する検討会議」委員、"WONDER SEEDS"(トーキョーワンダーサイト)2010~14年審査員等を歴任。近著『現代アート経済学』(光文社新書)や『現代アートを買おう!』(集英社新書/中国語・簡体字版・中国 金城出版/繁体字版・台湾 Uni Books)等の著者がある。

Kindly supported by:Taka Ishii Gallery | ROH Projects | Yavuz Gallery | Yutaka Kikutake Gallery | Uragami Sokyu-do | galerie nichido

©2009 nca | nichido contemporary art. All Rights Reserved.