Tracing the past - タイのコンテンポラリーアートシーン -

Tracing the past - タイのコンテンポラリーアートシーン -

2016 11.25 - 2017 1.14

オープニングレセプション
11.25 (金) 18:00 - 20:00

Press Release

会場:nca | nichido contemporary art
会期:2016年11月25日(金)- 2017年1月14日(土)
営業時間:火 – 土 11:00 – 19:00 (日・月・祝 休廊 / 冬期休廊:12月30日~1月9日)
レセプション:11月25日(金)18:00 – 20:00 *coffee provided by Nestle*

作家アーティスト:
Dusadee Huntrakul | Torlarp Larpjaroensook | Soichiro Shimizu | Tawan Wattuya
デュサディー・ハンタクーン | トーラープ・ラープジャロエンスック | 清水 | タワン・ワトュヤ

タイの現代のアートシーンを初めて紹介する「Tracing the Past 」展を開催いたします。本展はタイ在住の:Dusadee Huntrakul(デュサディー・ハンタクーン)| Torlarp Larpjaroensook (トーラープ・ラープジャロエンスック) | Soichiro Shimizu (清水 壮一郎) | Tawan Wattuya (タワン・ワトュヤ) の4名によるグループ展です。この企画は現在バンコクに13年間スタジオと居を構える日本人アーティスト、清水 壮一郎さんとの出会いから始まりました。
タイでは長年にわたり多民族間の紛争と政治的混乱によって現在も市民生活は常に不安にさらされています。
参加アーティストはそれぞれ自国を離れ国外での美術教育や、アーティストレジデンスを経験し、その体験をもとに過去の記憶やタイの現状を客観的な視点で、詩的かつユニークに表現している4名です。是非ご高覧ください。


タイは、2014年の軍事クーデターで陸軍司令官プラユット・チャンオチャが全権を掌握し、首相に就任して以来、軍事政権が続いています。プラユット司令官の支配下後も、依然として政治的混乱は続き、10年が経ちます。この間、選挙で選ばれた政府が2度の解散の憂き目にあい、国民による大規模な抗議運動は結果として2010年の軍事的弾圧につながり85名が死亡、数百名が負傷しました。今般のクーデターは、タイの歴史の分岐点となる1932年以降12回目となります。1932年に、フランス留学から帰国した文官と軍人が革命を推進し、無血で、当時のシャム国の絶対君主制を無血で立憲制へ導きました。それ以来、1939年にタイと名づけられた新しい国の首相は30回も交代してきました。背景には、この数十年間の様々な圧力下での、政府の内紛や一般市民と王党派の不安定な関係、民主的政策の失敗や「自由世界」の状況変化、東南アジアにおける共産主義の伸長、国家主義のレトリックの変容傾向があります。
現在のタイの政治状況は、既得権益の維持を狙った様々な制度の再構築を許し、新憲法の起草や議会の構造改革を行うことで、今世紀以降自由選挙で選ばれてきたような行政体制に権力が戻らないようにしようとしています。

デュサディー・ハンタクーンの手がけた表情に富むドローイングや小さな立体作品は、個人と集団とがが交わる点を強調しています。作品の一部はアーティストたちが作った物ではなく、家族や友人との間で長年に渡って交換されてきたものを用いています。人と人との関係は移ろいやすく、途絶えることもありますが、こうした作品は記憶やつながりを留める手段となります。非常に比喩的で、ときにシュールな形が、オブジェや像がよりどころとする幾筋もの伝統を私たちに想像させ、人間の記憶や感情に共通するものがあることを思わせます。
また、本展にはデュサディーの長辺作品シリーズ「*アイワ・オング著、-Buddha Is Hiding,をたどる-」も含まれています。Buddha Is Hidingとはアメリカへ移り住んだカンボジア移民たちの外国文化の克服の経験を綴った本で、デュサディーはその記述を基に1ページごとにテキストに沿って、彼の経験、視点を通してドローイングを描いています。

トーラープ・ラープジャロエンスックによるファウンド・オブジェの集まりは、どれも形状に不思議な魅力があります。Torlarpはアニミズムの強い国であるタイの家々に置かれた様々な祈祷用品に関心を寄せます。迷信的な世界観に発明や変化の観念を重ね、作品の多くに実用的な機能を持たせています。彼は作品を通して、私たちは社会集団としていかに変われるか、どんな信念を守り通していくのか、と問いかけます。

清水 壮一郎の絵画は、幻惑的なのに組織的、抽象的なのに結合的、という微細な表面効果で観る者を大いに惑わせます。国の枠を超え、日本の伝統工芸と欧米の表現主義を取り入れ、それらが溶け合っていのが特徴です。彼の作品は限界と差異を深く反映し、私たちにそれを超えて行くよう訴えかけます。細部までこだわりながらも壮大なスケールの作品は、まるで広大な礼拝堂の壁画を凝視するように近づいたり距離を置いて観ることを示唆する多くのタイアーティストの手法とつながります。

タワン・ワトュヤの作品は大衆メディアがイメージする美とポルノグラフィの両方に注目させます。その挑発的な作風はタイ国内でも広く知られています。「Tracing The Past」では、野良犬と美人コンテストの女性たちを描いた作品を素早いタッチで描き上げ、自国の社会的ヒエラルキーを鋭く批判しています。
女性、特に有名人女性のもつ美への執着、悲惨に放置された存在や貧困を犬たちに象徴し、タワンは現代のタイ人が持つ固定観念や矛盾を私たちに問いかけます。

Brian Curtin – 東南アジア美術 美術評論家

デュサディー・ハンタクーン
1978年生まれバンコク在住 /カリフォルニア大学ロサンゼルス校、カリフォルニア大学バークレー校卒業
主な展覧会 : Beneath the Moon/Sous la lune at Palais de Tokyo in Paris and Institute of Contemporary Arts Singapore(2015-16)、Fertile ground: Art and community in California at Oakland Museum of California(2014–15)、Memorandum, at Bangkok University Gallery(2014)、4th Singapore Biennale(2013)、Nuova (arte) povera, Osage Gallery, Hong Kong(2012)


トーラープ・ラープジャロエンスック
1977年生まれチェンマイ在住 / チェンマイ大学絵画科卒業
主な展覧会 : Bookshelf at 8Q Singapore Art Museum、The Journey of Switchhead : Hidden Lab, Siam Center, Bangkok(2015)、The Journey of Switchhead: Send Mom to The Moon, Gallery Seescape, Chiang Mai(2015)、Northern light, Arteral, Sydney(2012)レジデンス : Koganecho Bazaar Yokohama Project in Japan (2015)
オルタナティヴ・スぺ―ス/プロジェクト:Gallery Seescape, Chiang Mai(2008)、a mobile gallery project called “3147966”(2009)


清水壮一郎
1966年生まれバンコク在住
主な展覧会 : Solo exhibition at the Palazzo Collicola Arti Visive, Italy(2016)、New Works, YenakART Villa Gallery, Bangkok(2016)、Kalopsia, RMA Institute (2015)、Sculpere, Adler Subhashok Gallery, The Art Center Chula, Bangkok (2014)、Yoshii Gallery, Paris(2001)、Itochu Gallery, Tokyo(1999)、Elysium Gallery, New York(1998)、Caelum Gallery, New York (1998)アートフェア : Art Stage Singapore(2016)、Art Taipei(2015)、New York Independent Art Fair(2000)コレクション: Shu Uemura Cosmetics Company, Tokyo、Dowa Kasai Insurance Company, Tokyo、Sony Headquarters, Tokyo、Sony Plaza, New York


タワン・ワトュヤ
1973年生まれバンコク在住 /シラパコーン大学卒業
主な個展 : a Peculiar Nature, The Lodge Gallery, New York(2016)、When Water Beats, Artetplus, Paris(2015)、Like a Virgin, Alliance Francaise, Brisbane(2014)、 Tii Tai Krua, Chula Art Center, Bangkok(2013)、Okinawa Part II, Tsuchi Gallery, Naha City, Okinawa(2010)、Siamese Freaks, Numthong Gallery, Bangkok(2007) 主なグループ展 : Prudential Eye Award Contemporary Asian Art, Art science Museum, Marian Bay Sands, Singapore(2016)、Anthropos, Sundaram Tagore Gallery, New York(2014)、Delirium & Obsession, Tang Contemporary Art, Bangkok(2013)、BUKRUK – STREET ART FESTIVAL: The Thai-Europe Connection, Bangkok Art and Culture Centre(2013)、Cut Thru, LASALLE Collage of the Arts, Singapore(2012)、3 Young Contemporaries, Valentine Willie Fine Art, Kuala Lumpur(2008) レジデンス:Tang Contemporary Art, Beijing, China(2012)、68 Square Metres Art Space, Copenhagen,Denmark(2011)、Okinawa O.C.E.A.N, Okinawa, Japan(2010)

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